近畿大学医学部客員教授 山田秀和先生
近畿大学医学部客員教授
山田秀和先生
―まずは先生のご専攻と現在までの再生医療への携わりについてご紹介いただけますでしょうか?
私は1981年に近畿大学医学部を卒業して、その後、近畿大学医学部附属病院で研修を受けて、その後大学院の途中から、国内留学、オーストリア政府給費生でオーストリア、米国と留学し、博士号を取りました。奈良病院で助教授や教授として活動していました。2007年にはアンチエイジングセンターを創設し、再生医療やアンチエイジングに取り組んできました。
―再生医療の初期段階から関わってこられたそうですが、その頃のことを教えていただけますか?
1999年に奈良病院で再生医療の研究施設を計画しました。当時は閉鎖系システムやP2レベルのコントロールを備えた培養室を設置するなど、先進的な取り組みをしていました。でも、資金不足で一部のプロジェクトは中断せざるを得なかったです。それでも、脂肪幹細胞を用いた心筋梗塞後のバイパスやがん治療後の修復に再生医療を活用する試みを続けていました。
―皮膚科領域での再生医療についてもお話いただけますでしょうか。
皮膚科ではアンチエイジングの分野で再生医療の可能性を探っています。1986年頃にはウイーン大学で企業と一緒に表皮細胞の培養をしていましたが、ビジネスとしては成功しませんでした。その後、幹細胞研究が進んで、真皮への幹細胞注入が表皮再生に効果があることがわかってきました。これが新しい治療法として期待されています。
―実際の臨床現場での課題についてはお考えを聞かせていただいても宜しいでしょうか?
実際の現場では、細胞の質や培養液の品質管理がとても重要だと思います。細胞のキャラクタリゼーション、特徴をしっかりと把握したり、血清フリーの培養液を使ったりして、品質を保証する基準が必要です。さらに、細胞の「エピジェネティッククロック」の測定も大事で、ダイレクトパーシャルreprogramming による幹細胞を若返らせる方法を研究しています。
―上清液やエクソソームについての考えも教えてください。
上清液やエクソソームについては、サイトカインの濃度や細胞表面マーカーの評価が大事です。これらが製品の品質を保証するための基準になるべきだと思います。また、細胞上清中の多様なファクターの評価も必要で、再生医療製品の品質管理において重要な役割を果たすと思います。特にmicroRNAやncRNAはエピゲノムとして、遺伝子発現に影響しているので、若返りメカニズムに重要でしょう。
― 一般社団法人再生医療安全推進機構は昨今のエクソソームや上清液等で問題が発生している再生医療業界において、まずは安全性を第一とした治療を行う活動を啓発していきたいと思っております。当機構が果たすべき役割や求められる姿について、先生のお考えがありましたら伺いたいと思っております。
一般社団法人再生医療安全推進機構に対して求めることとしては、細胞加工や製品の品質保証に関する基準をしっかり作って、記録を管理する体制を創るべく活動をしていただきたいです。細胞の品質管理やサイトカインの評価を徹底する体制を創ることが、再生医療製品の安全性と効果を確保することにつながり、結果的に将来の多くの患者さんを救うことになると思います。
―最後となりますが、再生医療業界にメッセージを頂けますでしょうか?
薬機法や再生医療法案を適切に守り、さらに倫理規定を満たすことが必要だと思います。これからも安全で効果的な再生医療を提供するために、皆さんと一緒に頑張りたいと思います。