
1. はじめに
最近のNHK報道で、再生医療の自由診療における『厚生労働省は認可してない』、『国は審査してない』がない点が強調されました。しかし、これは事実を単純化しすぎている。本記事では、厚生労働省の実際の関与と責任について、正確な事実をお伝えします。
2. 厚生労働省の関与
厚生労働省は、特定認定再生医療等委員会を認定し、その審査プロセスに関与している。届出を受理するという行為自体が、事実上の承認を意味します。これを「関与していない」とするのは誤解を招く表現です。
<特定再生医療等委員会の審査プロセス>
①医療機関:再生医療等提供計画書を作成
②特定再生医療等委員会:医療機関より審査依頼を受け、審査を実施
③委員会の審査結果:審査の上、内容が可決されると承認という意見書を発行
④医療機関:承認された意見書を提供計画書に添付し、厚生労働省へ届出
⑤厚生労働省:届出内容を確認し受理
⑥治療開始:受理された提供計画に基づき、医療機関で再生医療を実施
特定認定再生医療等委員会は、再生医療の提供計画を審査する機関として、厚生労働省の認定を受けたうえで審査を行います。したがって、『国が関与していない』という見解は事実と異なります。
まして、認定基準には下記の添付資料(資料①、資料②)にあるように、特定認定再生医療等委員会が再生医療(治療計画)の審査業務を厚生労働省の代わりに審査を行う機関として認定されているのは明らかです。
(資料①)
引用:認定再生医療等委員会の認定等基準(案) 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000032909.pdf
(資料②)
引用:特定認定再生医療等委員会の構成要件 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000566750.pdf
3. ガイドラインの不備
審査基準や手引きの整備不足は、厚生労働省の責任です。
委員会の審査に問題があるとすれば、その根本的な原因はガイドラインの欠如にあります。
4. NHK報道への反論
NHKの報道は影響力が大きいです。
NHKは、メディアとして事実を正確に伝える責任があります。国の関与を無視することなく、事実を正しく伝えることが重要です。
5. 結論
再生医療を正しく理解し、再生医療の現場の可能性を最大限に活かすためには、厚生労働省の責任をしっかりと問う必要があります。
現在、厚生労働省はガイドラインを整備し始めていますが、再生医療の現場、すなわち委員会や医師の声を十分に反映させることが重要です。
現場は治療の質と安全を担保する重要な役割を担っており、無秩序な医療を防ぐためにも、現場不在のまま法整備を進めることは避けるべきです。実効性のあるガイドライン策定が求められます。
誤解なきように言っておきますが、確かに特定認定再生医療等委員会には善悪賛否両論ありますし利益相反や委員会ビジネスと言われる程、レギュレーションが低い委員会も存在します。
そういう委員会を擁護しているわけではなく、現場の意見を無視して厚生労働省がガイドラインを作成しても、この再生医療業界の発展にはならないことを言いたいだけです。
<参考>
「国は審査していないのに… 自由診療の“再生医療” 広告に注意」 NHK https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250322/k10014756071000.html